境界

自殺企図

 ある日、幸子からメールが届いた。

「もうなにもかもやるきがなくなったので死にます」
 
 幸子がおかしくなった時のメールは、
句読点がなく、漢字への変換もない。
 文体を見ただけ、正常時ではないことが、即わかった。
 思い悩んだ末ではなく、
衝動的な行動である場合が多い。

「さみしい、さみしい、さみしい、
すぐ帰ってきて」
 仕事中、突然メールがきた。
 
 本当なら、無理と言いたいところだが、境界型人格障害に対して、突き放す言葉は御法度である。
 
 見捨てられるという不安が常にあり、
その結果、頼れる人を見つけると、
依存してしまう。

 この時は、僕に依存していたのだろう。
 あの男にも、依存していた時期があったのだろうか?
 境界型の依存は、わがままの範疇を越えてしまっている。
 
 仕事を放り出して、帰れるわけはなく、
「できるだけ早く帰るから、もう少し待ってね。」

「すぐでなきゃイヤ。」

 やっぱり、引き延ばすのはダメだった。
 待つことができず、即結果を求めるのも、よくあることだ。

「わかったよ。すぐに帰るよ。」
と半切れ状態で返事をすると、

「怒ってるなら、もういい。死ぬから。」

自殺をほのめかすこともよくあるが、
実際に行動に移すこともあるため、
安易に考えてると危険なこともある。

本気で死ぬつもりはなくても、
衝動的に死に至る行動を取ってしまうこともある。
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