境界
【第5章】気づかなかった苦悩
 あれから三年、僕たちは幸せいっぱいの日々を送っていた。
 ただ、これは僕が思っていただけで、
 この時幸子は苦しみもがいていた。
 僕は、そのことに気づいてやれずにいた。
 今も、僕はそのことを後悔している。

「最近、イライラしていることがよくあるけど、何かあったの?」

「何もないよ。」

「その言い方が既にイラついてるよ。」

「何もないってば。」

「本当に、何もなければいいけどね。」

 この時、僕は幸子が何故イラついているのか、
 全く想像することができなかった。

 それから一ヶ月後に、
 僕の胸が張り裂けそうになる衝撃的な出来事が起こるとは、この時考えもつかなかった。

 精神的に不安定な日々が続いたため、
 僕は幸子に心療内科に行くことを勧めた。
 自宅近くの川越クリニックで診察を受けた結果、
 うつ病及びパニック障害と診断された。
 原因はストレスと言うことだったが、本当の原因は他にあった。




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