俺様のカゴの中
金で引き取ってもらおうかとも思ったけどやめた。



さんざん苦労させられたんだ。



深見が運んで来たジュースを飲むガキが気になる…。



俺の予想だと弟だろう。



「コイツの名前は善(ゼン)」

「血縁上の弟か」

「そうだな。お前、引き取れ」

「あ…?」

「育てられなくなった」



ふざけてんのか?



またアンタは息子を捨てるつもりか?



「死ぬんだとよ、俺。余命1ヶ月だ」

「ソイツの母親がいんだろ」

「善を産んで死んだ」

「俺の知るところじゃねぇ。テメーのケツぐらいテメーで拭けよ。俺はアンタの尻拭いの為にいるんじゃない。帰れ」



そう言ったら立ち上がった親父が俺の目の前にひざまずいた。



こんな姿見たことなんて当たり前にない…。



土下座なんてするようなヤツじゃなかったくせに…。



「頼む…。まともに…育ててやってくれ…。保険金の受け取りは雷になってる」

「今更ふざけんなよ。死ぬなら勝手に死ね。借金作って逃げたヤツがガキまで押しつけんじゃねぇよ」



それでも頭を上げない親父…。



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