*SWEET LESSON*
「まぁ……とにかく上がって」
ファーの付いた黒のコートを着た彼は「おー」とだけ言って、ずかずかと家の中に入ってくる。
先のとんがった靴を乱雑に脱ぎ捨てて、いきなり
「ん」
と、手にしていた紙袋をあたしに付きつけてきた。
「何?これ」
「ケーキ。食うだろ?」
食べるけどさ。絶対大和が食べたいから買って来たんだと思う…
彼は見た目はこんなんだけど 結構なスイーツ好きだったりする。
そう言う所は昔と変わってないんだよねー。
「俺コーヒーね。ブラックで」
……変わったのは見た目と、この図々しさかな。
「もーさー。今度からチャイムは3回までにしてくんない?うるさいし。
それに電話まで……っていうか、番号変えた?」
「…電話……?してねーぞ」
「え……」
じゃあ、間違い電話かなんかかな。
留守電も残ってないみたいだし…。
「じゃあ、なんで大和は家に来たの?」
「さなが電話してきたからだろ?もう忘れたのか?」