真面目なあたしは悪MANに恋をする
「ケンケンを待っててももう来ないよ」

「五月蠅い」

茉莉の手に力が入る

ぎゅっと白いハンドタオルが小さくなる

馬鹿だよね、そういう行為がさ

無駄じゃん

強がってどうするつもりさ

泣きたい気持ちを必死に堪えてさ、何をしたいわけ?

泣きたいときに泣けないから、笑いたいときに笑えなくなる

人を信じたいときに、信じられなくなる

裏切られたくないから、さきに自分から裏切りたくなる

そうやってどんどん性格がネジ曲がっていくんだよ

「もう気づいてるんでしょ? あんたがケンに騙されたってことぐらい」

「五月蠅い」

「信じるヤツが馬鹿なんだって言った手前、葉南に八つ当たりができない…とか考えてるだろ?」

「うるさいって言ってるでしょ!」

茉莉が手に持っているハンドタオルで、俺の頬を叩いた

ぺチンと頬にあたるが、別に痛くない…ていうか、くすぐったいよね

「階段から突き落としてさ…高笑いして、満足したところで、葉南に騙されて、ご気分はどう?」

僕の言葉に、茉莉が目を細めて睨んでくる

そんな顔してもさ

怖くないんだよね

だってさ、しょせん女だもん

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