真面目なあたしは悪MANに恋をする

片岡side

「あいつぅ…マリを『自分の女』って言いやがった。殴ってやる!」

ケンが寺島のところに戻ろうと、僕の腕を振り払おうとしてきた

「おいっ! 話しがあるんだから、暴れるな馬鹿っ」

僕はケンの腕をぐいっと引っ張ると、ショッピングモールの隅にある階段にケンを連れて行った

「いい加減に、目を覚ませ」

ケンが僕から目をそらすと、階段に座り込んだ

「茉莉は『真里』じゃないってわかってるだろ。もうお前の大好きな妹はいないんだ。同じ名前だから。同じようにリストカットをしているからって、ダブらせるな」

「…わかってる」

「茉莉から距離をおけ。夜中に、ベランダに立つお前の悲しい顔はもう見たくない。辛いんだろ? 茉莉が『真里』に見えて、妹にしてやれなかったことをしたくて…でも『真里』じゃない彼女に、心のどこかで苛ついてる己に、腹を立ててるんじゃないのか?」

ケンが鼻を鳴らすと、ぴっと唇を閉じて、鼻をひくひくさせた

「俺の心を見透かすなよ、チョー」

「抱きもせず、宝モノのように扱ってるわりには、時折厳しい目で、鏡映る自分を睨んでたら、わかるだろ」

「ずるいっすよ」

「『真里』はいないんだ。前を見ろ。お前は誰と誰を傷つけた?」

ケンが自分の髪を掻き毟った

「茉莉ちゃんとマサを傷つけた」

「とくにマサだろ。あいつは…誰よりも自分の居場所を欲しがってた。それをお前が奪った。あいつが築き上げた場所から追い出し、初めて大切に思った女性を傷つけて、奪った。その責任の重さ…わかっているな?」

「…ああ。迷惑かけた」

「いや…僕に頭をさげるな。謝る相手を間違ってる」
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