真面目なあたしは悪MANに恋をする
それから何をやるにも、やる気が出なくて…家を出た

兄さんと同じ顔だったばっかりに…兄さんと双子だったばっかりに

俺は俺らしく生きられないって感じた

兄さんとは違う生き方を選べば、違う存在になれると思って、兄さんがやらなそうなことばかりに手を染めてきた

結局は、俺自身が『俺』という存在を認めて、受け入れてなかったに過ぎなかったんだよね

ただそれだけ

俺は、塾の前で足を止めた

一年後の受験に備えて、夢と期待を膨らませている生徒の合間から、会いたい人の顔が見えた

「…なんだ。こんなとこにいんじゃん」

俺の顔は自然と緩み、塾の中で幼い子どもたちに囲まれている茉莉の笑顔に癒された

「どうしたの?」

千明の声に、俺は塾から視線を動かした

「いや、別に」

俺は首を横に振ると、再び歩き始める

ほら、俺の言うとおりだろ

茉莉は真面目に生きてる

きちんと自分の足で、生きようとしてる

心配する必要はないんだよ

茉莉はもう気づけてるんだから、どう生きるべきか

どう歩むべきか、を

気づけてないのは、俺のほうかもしれないね

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