真面目なあたしは悪MANに恋をする

二人暮らし

-リンside-

「りーん、ねえ、リンってば! おーい、リンちゃぁん」

ソファに座って、DVDを見ている私の背後から、ケンの明るい声が聞こえてきた

「ねえってば。リンちゃぁん、リンリン」

「んもうっ、うるさい! 仮面ライダーのDVDを見ているときは話しかけないでって言ってるでしょ!」

私はリモコンで一時停止のボタンを押してから、後ろに立っているケンに振り返った

ケンは白い歯をむき出しにして、にこにこと笑っていた

「何よ、もう!」

ケンが私の家で一緒に住むようになってから、1年が過ぎていた

ケンは赤族を抜け、今はスーツにネクタイで真面目なサラリーマンだ

「俺、帰ってきたよ?」

「そうね。ここにいるんなら、仕事が終わって帰ってきたってことだよね」

「え? それだけ?」

「何よ…他に何を期待してるの?」

ケンがさびしそうな顔をして、首を傾げた

「一週間ぶりに会えた彼氏にたいして、冷たくない?」

「毎日毎日、時間を問わずに携帯に電話してきたくせに何よぉ。おかげで、撮影中ずっと恥ずかしかったんだから!」

私はケンの額を指でツンと押した

「だってさぁ…俺から連絡しなきゃ、リンは絶対に電話もメールもしてくれないじゃん」

「しないわよ。撮影で疲れてるんだもん」

「リン、冷たい! 戦隊シリーズのスーツアクターになってからのリンは、俺にたいして冷たい!」

「うるさいなあ。付き合ってもう一年だよ? いつまでもアツアツカップルってわけにはいかないでしょ?」

「俺、さびしいなあ」

「はいはい」

ケンはスーツのまま、私の隣に腰を下ろすとじっと見つめてきた

「ねえ、聞いてる?」

「聞いてるよ」

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