360゜
なぜか「すごく悲しい」という感情はなかった。
ただ、途方もなく「儚い」という気持ちが心の底から溢れ出てきた。

第一、この学校で女子に人気な彼に片想いなんて、なんて無謀なモノだったんだろう。
フラれる、なんて最初から分かっていたのに。そう思うと自分がバカらしくなって、自分に向かって笑った。あぁ・・もう、なにやってんの、あたし。
それでも目から流れてくるものは終わりを知らなかった。
何度も何度も、目から流れ頬を伝い、やがて堕ちていった。

(どうして涙がとまらないんだ・・・・)
――・・凄く切ない気持ちになって、でも何かまだ彼にやれることがあったんじゃないか、というじれったい気持ちもでてきた。
(・・・・・・どうせあたしなんて、彼にとってちっぱけな紙切れ以下なんだろうな・・)
いつしかネガティブになりはじめて、渇ききった唇をかたく噛みしめた。
「・・・・・・痛っ・・」
唇をきつく噛みしめすぎたせいで、唇が切れ紅い鮮血が唇に触れた指に滴った。
「汚ねぇー・・」
彼はそう一言いうと、こっちをチラリと見た。
すごく冷たい雰囲気を醸しだす切れ長の目だった。・・あたしはこの、彼の美しく整った顔立ちとクールな目に憧れ、惚れたのだ。だけど今、その目はあからさまに怒っており、顔の表情も険しい。あたしのせいなの・・・・?
(そんなにあたしのことが嫌いだったの??)
そう思うと、そうかも・・と思うこともあるけど、あたしとしては認めたくない事実だった。
「・・もうお前、俺についてくんな。目障りなんだよ」
そんな・・。・・・・・・嘘・・・・だ・・・・。
「・・・・・・・・・・どい」
「あ?」
こんなの、、
「・・うぜぇーんだよ、また泣くのか」
・・・・・・嘘だよ・・・・。
「言いたいことがあんなら、はやく言え・・・・」
「ひどいよっ!あたし、ずっとあなたのことが好きだったのにっ。どうして?どうしてそんな冷たい目を向けるの!?・・あなたの瞳が好きであなたが好きなの!どーしてもあなたしかあたしの瞳に入らないのっ」
「!!」
彼はあたしの剣幕に驚きながら、しかし「ふっ」と薄く笑った。
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