恋口の切りかた
「雪丸、おまえにも新しい兄上ができるぞ?」

座敷で刀丸と母上を待ちながら、
親父殿はそう言って膝に乗せた雪丸の頭をなでた。


雪丸というのは一番下の弟で、俺とは七つも年が離れているチビスケだ。

親父殿のいわゆる──妾(めかけ)の子で、俺とは腹違いになる。


「んん? どうだ、うれしいか?」

「はい! ちちうえ」

「おお、そうかそうか」


雪丸は、問題児の俺やクソ真面目でカタブツの平司と違って、素直で良い子なので……

……妾の子とは言え親父殿のお気に入りだ。


夕方の稽古を終えた門下生たちも帰って行き、刻限はちょうど飯の時分である。



刀丸の着替えを待つことしばし。


やがて、襖ががらりと開き──

なにやら上機嫌の母上が入ってきた。
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