恋口の切りかた
私がこんなにも円士郎のことが大好きだって、彼はきっとわかってないんだ。


「なにが女の人の正体を見極めるためなのようっ」


大声で泣きながら、
私は手当たり次第にぽいぽい石を川に投げた。


「知らないっ! そんな理由、聞いてあげないっ」


どっぽん、ばっしゃん。

水面が騒ぎ続けて、私の周りの川の水はどんどん茶色く濁っていく。


「ばかっ! エンなんか嫌いっ」


好きなのに。


「大っっ嫌いっ!」


大好きなのに──。


周囲から大きな石ころが消えてなくなるくらい、次から次へと放り投げて、
岸辺の持ち上げられない岩は走っていって川の中に蹴り落として、私は冬の河原で小さな嵐みたいに暴れ回った。

気持ちは全然晴れなかったけれど、
大暴れしていたら、沈んでいた気分は少しだけ浮き上がって、


「可愛い荒れ方をしてるんだな」

背後から聞こえた極寒の声に、私は川に投げ込もうとしていた石を抱え上げたままそっちを睨みつけた。

「おいおい、俺を恨むのは筋違いだぜ?」

あの店を飛び出した私の後をずっとつけて来たのか、河原に立った海野清十郎は満足そうにこちらを眺めていた。

「俺の言ったとおりだっただろう」
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