恋口の切りかた
「天童なんて呼ばれてチヤホヤされて……あんたなんて、ただの人斬りじゃない!

捨てられて、そのままのたれ死んじゃえば良かったのよっ」


おひさの声に重なるように、空で稲妻が光った。


「あんたのせいであたしは家族を失ったのに──その境遇のあまりの違いに、あたしは愕然としたわ」


前に町で会った時──

おひさが私に浴びせてきた罵声の裏に本当はどんな思いが隠されていたのか、私は初めて知った。


「それどころかお城の人間までたぶらかして、殿様の側室になるなんて──この女狐!」


それは、

清十郎が──


私は言い返したかったけれど、

雨に打たれて全身ずぶ濡れで、鬼女のようにこちらをにらみ据えるおひさの姿を見たら、何も言えなくなってしまった。


「人殺し!」



──人殺し……



おひさの言葉が、冷たい氷の矢のように胸に突き刺さった。
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