恋口の切りかた
腹の痛みが治まったのか、トウ丸はパタパタと着物の砂をはたきながら立ち上がった。

砂なんか付こうが付くまいが変わりないくらい汚い着物だと思うのだが。


「まねをしてるうちにね、何だろう……弱点っていうのかな。
きみが防げない方法がわかるようになってきたんだ」


防げない方法?

そんなもの、相手の動きのまねをしたくらいでわかるものなのだろうか。


「でね、きみが勝負してる相手もなんだ。
みんなそれぞれ防げない動きっていうか、棒の線みたいな……」

「だから棒じゃねえ! 刀だ!」

ここは譲れない部分だ。


俺の剣幕にびびったのか、トウ丸は「うん、ごめんなさい」と謝った。


うむ、よし。わかればいいんだ、わかれば。


「その、刀……の線みたいなのがあってね」


刀の線? なんだそりゃ。


「筋か? 筋──太刀筋ってことか?」

「うん? タチスジって言うのかな……その防げないタチスジの中にね、みんなが──誰もが──全員が防げないタチスジがある気がした。

それをどうしても試してみたくて」


俺はマジマジとトウ丸を見つめた。


「それで、勝負したかったんだ」

えへへ、とトウ丸は笑った。
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