恋口の切りかた
円士郎はそのまま、私に背を向けて歩き出してしまった。



あ……



円士郎が行ってしまう。
私を置いて、行ってしまう。



私は、ぞっとして



必死に、手を伸ばして──




気がつけば、円士郎の袖をつかんでいた。




驚いたように、円士郎が振り返った。


「やだ……っ!」

「──留玖?」

「やだ! やだよ、エン……行かないでよ。

私は──

私は、

エンがいなくなったら……どうしたらいいのかわかんないよ……!

私にはエンしかいないんだよ──

もう、

エンしか、

いないのに……」




な……なに言ってるの、私……?


そう思ったけど、止められなかった。




「風佳と行かないで。

私を一人にしないでよ、エン……!」


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