恋口の切りかた
そ、そりゃ、

遊水は粋で格好良くて、
優しいし、
何だか大人の男の人の余裕みたいなのがあって、

私もぽーっとしちゃうときがあるけど……


って、何考えてるんだよ私!



いやいや、

その前にそもそも──目の前で人が焼け死んで、みんな騒いでる時に

こんなこと考えてる場合じゃない気がするんだけど……



「え、エン……」

私が声をかけようとしたら、

「おい! これは、さっきの話と何か関係があるのか──!?」

鬼之介の声が飛び込んできた。

見ると、人混みを縫って、杖を突き突き
歩きづらそうに太鼓橋を上ってくる不健康そうな若者の顔があった。


鬼之介もここに……?


「さっきの話」ってなんだろう。


「わからねえ……ただ、死んだのが銀治郎一家の子分となると──」

円士郎はそう答えて、鬼之介と何やら顔を見合わせた。

「遊水の奴は気色を失ってたみてえだが……」

「まあ、そりゃそうだろうな、これは──」

鬼之介は白昼の惨劇に大騒ぎする群衆を見回した。


「一つ、発明家としてのお前に聞きたい」


橋のたもとには、いつの間にか筵が被せられていて、
円士郎はその下の膨らみを睨みつけた。


「仮にあれが人為的なものだとすると──人間に、あんな真似ができるのか?」
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