恋口の切りかた
「刀丸、お前──盗賊全員討ち取ったのか?」

俺は、泣き続けている刀丸をまじまじと見つめた。


俺自身も正直、

あんな凄いことになってる死体やら、
昨晩の凄惨(せいさん)な出来事を雄弁に物語るおびただしい量の血のあとやら……

こんな生々しいものを見るのは初めてのことだったのだが、
自分は武士の子だ、という矜持(きょうじ)で何とか平静を保っていた。


「凄ェじゃねえかよ! さすがオレの友達だぜ!」

しかし興奮した俺の声も全く耳に届いていない様子で、刀丸は青ざめた顔でがたがた震えている。

「何だ? そんなに怖かったのかよ」

そう言って、刀丸の手を握って──

ようやく俺は、刀丸が何かにおびえて震えているわけではないことに気がついた。


刀丸の手は、氷のように冷たかった。


「刀丸? お前──」

手だけではなく、全身が完全に冷え切って、唇や頬(ほお)からは血の気が失せている。


俺は、泣きながら必死に家の戸を叩き続けていた刀丸の姿を思い出し、

雪の降り積もった周囲と、
固く閉ざされた刀丸の家の戸を見た。


「お前、いつからここに……」
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