揺れる、山茶花







「    」


赤鼻が私の名を呼ぶ。

それはもう、極上の音楽のように私の鼓膜を振るわせて。

ついでにこの臆病な心臓も、震わせた。



赤鼻。

えくぼの可愛い赤鼻。

山茶花の香る赤鼻。

赤鼻は私にキスをする。




(…危うい)

下らない感情だと思わなくもない。

たまたま精神が不安定な時期にストライクで出逢って、慰められて、慈しまれて。

傷の隙間に薬を塗り込む行為と似てる。

一時の盛り上がりに過ぎないと、ふと、考える。


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