蛙の腹
彼女の顔を覗くと、彼女の大きな目が輝いていた。
眩しく見つめる彼女の瞳に、すべてを見透かしそうになるのを恐れた。
そんなことを思っている自分が恥ずかしくなった。

「ご飯は?」と彼女が聞いてくる。

「えっ、食べた?」と聞き返す。

「食べてないよ。何か食べたいものある?」

「ないね、グラタンとかかな。」

「いつもグラタンが食べたいっていうね。」

「あんまり食べることに期待してないからね。」

とりあえず歩く方向をきめて歩き出した。

「少し寒くなったよね。」

「うん、よかったよ。今日はショールを持ってきてて。」

彼女は秋色のショールをまっとっていた。

「じゃぁ、まず温かいものを食べよう。」

「鍋?」

「蕎麦でもいいんじゃん。」

「一昨日、蕎麦だった。」

女性はどこで何をやっているのか、その生態が僕にはまったく分らない。
まるで別の惑星から来たかのように遠い存在であるように思える。
だから、知ろうともしないし、深く理解しようとも思わない。
適当なところで合わせるように「じゃ、カレー屋でいいじゃん。」なんて適当に応える。

いつか、本気で理解できればいいやと思う。

一生、生きて女性という存在とは向かい合うことない存在なんだろうと思う。

遠い彼方のエイリアンのように生まれた環境も違えば、考えも、重い方も異なり、分かり合えない存在だと思った。
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