僕はその手をそっと握ることしかできなかった
歌うように真っ直ぐに
空撫さんは副部長たちと何かあったとしても毎日を何事もないように過ごしている。

そんなある日。

ボクは彼女の新しい一面を知ることになる。

部活のない日。

ボクは資料室に教材を返しに行った帰り、音楽室の前を通るとピアの音が聞こえた。

ふと、覗くとピアのを弾いているのは空撫さんだった。

ゆっくりと身体を揺らしながら弾いている姿は、何て表現したら良いか分からなかった。

目を細めて、鍵盤を見つめる。

薄く開いた唇は囁く様に微かに動いている。

夕日に照らされた髪は、日が透けて輝いているように見える。
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