僕はその手をそっと握ることしかできなかった
涙、熱く冷たく
次の日、沢田副部長と美朝さんは一緒に教室に入ってきた。

空撫さんはいなかった。

いつも三人一緒だったから違和感を覚えた。

約束したのにドタキャンされた相手と朝から、顔を合わせたくないだろう。

それにしても遅すぎる。

HRも始まりそうな時間がきても、空撫さんは来ない。

ケータイを見ていると副部長がボクの席に来た。

「空撫から連絡ねぇか?」

「いや、一緒にいるから」

「ボクより副部長たちの方が一緒にいるじゃないですか」

自分でも驚くくらい声が低くなっていた。

一緒にいるって言っても、あんたたちは空撫さんを傷つけるだけだ。

ボクと副部長が睨み合っていると、担任が入ってきた。

HRの最初に空撫さんが休みだと伝えられた。

「望月は一週間ぐらい休むそうだ」

理由は家庭の都合だそうだ。

隣の副部長は、真っ直ぐ前を向いて話を聞いていた。

それからボクは副部長と美朝さんと口をきかなかった。

授業が終わって、部活に行こうとしているとケータイが鳴った。
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