グリンダムの王族

唇が温もりに包まれる。
何度か啄ばむように触れ、また再び強く押し当てられる。
彼の舌が自分の唇をなぞる感触に、リズの体がピクンと震えた。
触れ合った唇を通じて、体中に響く鼓動が伝わっていってしまう気がした。

昨夜のキスとはまた違う。
なんだかいちいち驚いてしまう。けれども不思議と、もう恐怖は感じなかった。

やがて体を拘束していた彼の腕が離れたのを感じ、リズはそっと目を開けた。
その目がまたカインの瞳と出会う。

「明日も早いんだから、あんまり頑張りすぎるなよ」

「はい、、、」

リズの応えに、カインはまた穏やかに微笑んだ。
そしてリズから目を逸らすと、背を向けて厨房の出口へ向かう。
リズはぼんやりその背中を見送った。

やがてカインの姿が騎士と供に視界から消える。
その瞬間、リズは突然我に返って周りを見た。
そして自分に集まる視線に気付く。

現実に引き戻されたリズは、一気に耳まで真っ赤になって俯いてしまった。
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