グリンダムの王族
翌日、朝食を終えて部屋を出たセシルは剣を片手に城の廊下を歩いていた。

今日アランは、近衛騎士隊長に同行してどこかへ出かけている。
セシルはずっと放置しているクリスとたまには話でもしようかと、彼の部屋に向かった。

セシルを出迎えたクリスは、なにやら暗い表情だった。

「ちょっと運動しない?これから剣の稽古なんだけど一緒にどう?」

そんなセシルの誘いに、彼はゆっくり首を振る。

「そんな気分じゃない、、、」

「、、、どうしたの?沈んじゃって」

セシルは不思議そうに問いかけた。

「そっちはなんで平気なわけ?」

「、、、は?」

セシルの反応に、クリスは小さくため息を漏らした。

「話があるんだ」

突然クリスはそう言った。そして「入って」と言ってセシルを部屋へと導く。
セシルは首を傾げつつその後に続いた。

クリスはセシルを部屋に入れると、侍女をさがらせた。
そして長椅子に腰掛ける。

セシルは彼の深刻そうな様子に不思議な顔をしつつ、彼の隣に自分も腰をかけた。

「悪いんだけど、、、」

クリスはそう前置きし、一呼吸置いてまた口を開いた。「きみとは結婚できない」

セシルはその言葉に目を丸くした。

俯くクリスの横顔を見て、思わず「なに言ってんの??」と問いかける。

クリスはセシルに目を向けた。

「、、、好きになれそうにない」

セシルは彼の真剣な目をしばらく見ていたが、やがて吹き出した。

驚いてセシルを見るクリスの前で、セシルは楽しそうに声をあげて笑った。
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