グリンダムの王族
しばらく激しく泣き続け、やがてリズの涙が落ち着いてきた頃、彼女は顔を覆っていた手を離し、閉じていた目をゆっくり開いた。
カインはいつの間にかリズから離れていた。
そっと顔を上げると、寝台に腰をかけて自分を見ている彼が目に入る。

リズは涙に濡れた顔で、ゆっくり身を起こした。
彼から少し離れ、距離をとって座りなおす。
そんなリズの動作に、カインは困ったように苦笑した。

「もうしないって。
ラルフの側室だから、ラルフじゃないとダメなんだろ?分かったよ」

その言葉に、リズの緊張は少しだけ解けた気がした。
まだ声は出せないが、体の震えは止まった。

カインはリズをじっと見たまま、「で、、、名前は?」と改めて問いかけた。

「リズ、、、アンダーソン、、、です」

リズがやっとの思いで答えると、「リズね」とカインが呟いた。
そしてすっと立ち上がった。

「じゃぁな、リズ」

カインはそう声をかけると、ニッと笑みを浮かべた。

「はい、、、」

リズが応える。
カインはそれを確認すると、足早に部屋を出て行った。

リズはその背中を見送ると、安堵の吐息を漏らし、力が抜けたように、また寝台に横たわった。
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