これが俺の体験


家の外でおっちゃんの車を待つボクは凍えそうだ。


「寒い゛〜〜っ゛」


ガタガタ震える身体と歯がガチガチと音を立てる。

鼻は止まらないし、じっと立つのも無理。


錆びたロボットのように、円を描いて歩き回った。


まだがな゛〜……ざむぐでじにぞうだよ……。


吹き付ける北風が耳障りにビュービューと吹いている。


だけど家で待つより、ボクはお兄ちゃんを迎えたかったんだ。


だから待つ!


ボクは真っ赤になる手を押さえながら、道路をひたすら見ていた。


「良……!あんた風邪引くわよ!」


いつの間にか、お母さんはボクに怒っていた。

だけどボクは待ちたい!


「大丈夫だよ……。もう、来るから」

「何言って──」


お母さんが怒鳴り、ボクの腕を掴んだ瞬間だった。


車の走る音が微かに聞こえたのだ。


来た!


「お兄ちゃんが来るよ!」

「えぇ?」


お母さんは不思議そうに道路を見る。


すると、見慣れた白い普通車が見えた。


「あらあら大変だわ!」


こうなるとお母さんも慌てて家に走る。


ものすごい早い。
お母さんは階段をあっという間に上がり、家に飛び込んだ。


程なくして、外にいるボクにも聞こえるぐらい、お母さんの大慌ての声がはっきり聞こえた。


多分……お兄ちゃんも慌ててるんだろうな〜


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