ー親愛―




“で、これが自分の携帯番号な。…名前は多田慎二。”




優しい顔で携帯を触る




何秒かすると 私の携帯が鳴り、私はアドレスに『刺青男(多田慎二)』と残した




携帯を閉じると そこにはさっきとは違う…淋しい顔




“……。今日は満月か…”




気がつけば 辺りは薄暗くなっていて 夕陽の代わりにまん丸な月が顔を出していた




“…本当だね。私、満月って嫌いなんだ…”




“へぇ。そう”




あまり感情を表さないその言葉







“自分も…満月は嫌いや…”








満月が嫌いな私




だけど この時はこのまま時間が止まればイイと思ったんだ




このまま一生…




ふたりで見上げる満月が この時だけは、とても綺麗で 切なかったんだ





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