男子、恋をする
内緒のヒロイン
「とうとう校長、胃痛で休んでるらしいよ。今職員室で教頭に早くヒロイン決めろって泣きつかれてさー」
俺の学年演劇主役が決まって、既に一週間が経ってしまった。
未だに決まらないヒロインに、校長を始め学校中がヤキモキしてるとかしてないとか……。
争奪戦を繰り広げていた女子たちもほとんどが自宅療養中。
つーか、女子が人前に出れんくなるまで殴り合うってどうよ。
……やっぱりえげつないし萎える。
それに比例して、学校側からの推薦者はますます女子の脅威を感じて辞退するばかり。
「ここまで決まんないと逆に澪斗が嫌われてるみたいだねー」
いつにも増して眉間のシワを濃くした会長や、唸り声が止まらない乙部。
さすがに一週間も経てば焦りが生じてくる。
ヒロイン不在のまま文化祭まで残り三週間。
劇の練習度はゼロ。
これじゃあ結局、何の為に1カ月前から取り組んでるのかわからない。
この重苦しい空気も読まずに一人ケラケラと笑ってるバカ那津に、思わず大きな溜め息が零れた。