ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 大事な話の途中で、遠慮もなにもなく言いやがった。空気読め。
「おお、そうか。なんでも好きなもの言ってくれ。このホテル、なんでも用意してくれるぞい」
「マジ?! かなりアガるんだけど☆」
 まるっきり、孫を甘やかすじいちゃんだな。もしくはヤバい趣味持ってるじいさんか。
「ぢゃあねぢゃあね。ペパロニのピザとBLTバーガー、あとプロシュートのバゲットサンド、チーズ多めで。あとコーラおかわり」
「ほほ、よう食べるの。若さの特権じゃな」
「いや、こいつの場合は特別なんだが……」
「ミスタ・ストークス。話の続きを」
「おお、すまん。また脱線してしもうた」
 見かねたディルクに諭され、話を戻す。横でバトラーが電話をかけていた。
「そんなわけで、ギャングどものケツの穴をほじくり返してきてくれ。もちろん、報酬は出す」
「あんた金持ちのくせに、言葉がきたねえな。ま、良いけどよ。
 で? 報酬はいくらだ?」
「100,000ドルでどうじゃ?」
 ひゅう、と俺は口笛を吹く。
「ずいぶん気前の良い話だな。確かに最近、景気は良くなってきてるけどよ」
「無いように見えて意外とあるのが、金というもんじゃとわしは思うがな」
「どういう意味だ?」
「なんだかんだで一家に2台は車があって、ほとんどの国民が携帯端末を持ち、週末にはキャンプに出かけバーベキューをし、クリスマス休暇には海外に行く。
 どうじゃ? 意外とみんな『持っとる』とは思わんか?」
「思います」
 俺の代わりにディルクが答えた。
「本当に『金がない』というのは、世界中のほとんどの人間が貧困にあえぐ状態です。確かに、常に空腹に苦しんでいるセグメントの人間がいるのも確かだが、少なくとも先進国に限って言えば、大多数の人間は少なくとも腹六分目といったところでしょう」
「ほほう。お前さんなかなかよく見抜いとるな。良いビジネスマンになれるぞ」
 そう言ったストークスじいさんの目が、紛れもないビジネスマンの目になっていた。
「恐縮です。そもそも現状の株式相場でも――」
「ちょーヤバっ! ここのプロシュートとチーズ、マジヤバすぎくん!」
 せっかく良いこと言おうとしたのに。ディルクの台詞をさえぎって、あかりがでかい声で『ヤバいヤバい』を連呼する。
「……仕事の話をしましょう……」
 ちょっと可哀想になってきた。
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