不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
私の心の中は、コウに対する怒りや、マイに対する申し訳なさでごちゃ混ぜ。
自分自身でも、自分の心をうまくコントロールできない状態。
「・・・ルミが、気にすることじゃないよ。」
そんな私の気持ちに気づいていたのか、ミヤビが声を掛けてくれる。
「・・・・・うん。」
私は、相変わらずのうわの空。
耳では聞いているが、どうしても、頭の中に入ってこなかった。
「おい、いつまで、そこに立ってるんだよ?邪魔だから、帰らないなら、席にでも座っておけよ。」
リョウが、ぶっきらぼうに声を掛けてきた。
私とミヤビが立っていた場所は、店の入り口で、確かにお店にとっては、邪魔な場所だった。
「ルミ、席に座ろう。」
ミヤビが、優しく私に声を掛けてくる。
私は、そのミヤビの言葉にうなずき、ゆっくりと、一番近い席に座った。
そんな私とミヤビにリョウが、温かい紅茶を運んできてくれた。
「・・・飲めよ。」
愛想のまったくない表情で紅茶をテーブルに置くリョウ。
店内は、今までいた少数のお客さんも、先ほどの騒ぎで帰り、私とミヤビだけになっていた。