想うのはあなたひとり―彼岸花―


「朝からそんな大きな声出してびっくりするでしょう?」



「早く!手当を!俺の人生がかかってるんだ」




「うるさいわね、傷見せて?」



先生に擦りむいた足を差し出す。
軽く血を拭き取ったあと、オキシドールを綿につけて優しく傷口に触れていく。

先生の後ろでは弘樹が「治るよね?」と連呼していた。




「よし、これで大丈夫!二人とも新入生でしょう?早くクラスに行きなさい!」




「良かったぁ。先生は命の恩人だよ!ハグでもしとく?」




「要りません」




先生と弘樹の会話を聞いていたら何だか安らいだ。
血を見たときはうるさかった心臓も今は一定の速度で動いている。


久しぶりに人に触れた瞬間だったのかもしれない。




「じゃクラス行こっか。何組?入学案内の紙に書いてあったでしょ?」




「あ、うん…えっと…7組」




「まじ?一緒!俺も7組!事故の原因の皐も7組だよ。あとで謝らすから!行こっか」





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