窓に影
13・熱が冷めたら




 聡美に借りたあのマンガに、ヒロインがヒーローを酷く振るシーンがあった。

 ヒーローはそれでもしつこくヒロインに言い寄った。

 メールをしたり、家へ押し掛けたり、放課後は必ず教室まで迎えに行ったり……。

 本当はヒーローのことが大好きなヒロインは、彼の粘り強さに愛を感じて、また二人はラブラブに戻るのだった。



 ここはマンガのような生ぬるい夢の世界ではない。

 冷えきった現実世界では、自分を暖めなければ夢を見ることもできない。

 暖かかった時はフットワークも軽快だったのに、冷めてしまうと動くことさえも億劫だ。

 そうして身も心も硬くなり、億劫さは更に増す。

 あれからの私は、冬の体育の授業で準備体操をサボりたがる人のような心理状態だった。

 動けば暑いほど暖まるのはわかっているのに、寒さの中で手足を動かす勇気が出ない……。

 そんな感じ。

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