ハニー*スパイス
「いつまでここにいるつもりだよ!」
男の人は、岳さんに対して一方的に文句を言ってる。
「……いい加減、現実を見ろよ!
先方はもう、しびれきらしてんだよ!
このままじゃ契約破棄されんぞ!」
「ああ……わかってる」
「とにかく、ちゃんと考えろよ」
声が大きくなる。
足音が近づいてくる。
ドアを開けた男性が、あたしを見て、「あ……」と声を出した。
「こ、こんにちは」
あたしは慌ててペコリと頭を下げた。
「椿……」
男の人の背後から、岳さんが顔をのぞかせた。
「なぁ」と男の人は岳さんを振り返る。
「まさかと思うけど。
お前が腹を決められないのは、この子のせいか?」
岳さんはあたしから目をそらして、「違うよ」とだけ答えた。