ハニー*スパイス

そっと足を動かす。


紙袋や通学バッグを置きっぱなしにしていたテーブルの方に。


背中に隠したモールに気づかれませんように。


だって、バレたら惨めすぎるよ。


ひとりで浮かれてた……なんてこと、知られなくない。



あたしは最後まで意地っ張りで強情なんだ。


「じゃ、もう、あたしが来る必要ないね」


「そうだな」


――ズキンッ


って、わかってたことなのに、胸が痛い。



後ろ手に、さっとモールを紙袋にしまいこむ。


急いで岳さんに背を向けると、もう二度と振り返らなかった。



「じゃ、おっ幸せに~♪」



出来る限り明るく言って、

背後にいる岳さんに、大げさなぐらい手を振った。
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