ハニー*スパイス


よくわかんないよ。

でも……。


あたしはキッと岳さんを睨んだ。


「だったら。
だったら、岳さんだって同じじゃん。
百合さんに会えない寂しさを、あたしで埋めようとしたんじゃないの?
……あたし達……同じじゃん……」


腕を伸ばして、岳さんのジャケットの裾をギュっと握り締めた。


お願い。


この手を払いのけないで……。


じっと岳さんの返事を待っていると


ポンって頭に手がのっかってきた。


「お前の、そういう気の強いとこ……。
オレ、好きだよ」


好き……って。


好き……って言ってくれた。



それはきっと、恋とか愛の“好き”じゃないことぐらいわかってたけど。


それでもうれしかった。



決めたの。

もうこれ以上は何も望まない。



せめて、百合さんが来るその日まで……。


そばにいることを許してください。



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