halfway <短>



「――ほら、早くっ!」



せき立てる私の一言に、彼は意思を宿した強い瞳を、私に向けて頷いた。


そして彼は「ありがとう」と言って、堰を切ったように駆け出す。



あの子の元へと。


真っ直ぐに――



私は、走り去る彼の背中を、ただ見送る。


私が押したはずの背中は、一瞬で遠ざかっていった。



掴めるはずのないその背中に、私は手を伸ばしてみる。


当たり前に行き場のないその腕は、空を切って、ダラリと地面に向かって落ちる。




そして、彼の姿が見えなくなると同時に、私の頬には涙が伝った。



……これでいい。


これでいいんだ。



とめどなく流れ続ける涙は、窓の外でいつの間にか激しくなった雨よりも、ずっと大きな雨粒だった――


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