題 未 定

哀しみも




カン高い着信音で
再び目が覚めた。
冷房がききすぎた部屋の中
少し身震いする。
薄暗闇のなかで光る
着信を知らせる携帯が
なんだかひどく
不気味に思えた。


携帯を手に窓の外を見ると
空にはいつの間にか
黒い雲が広がり
まだ少し明るいはずの空を覆っていた。



3回ほどの呼び出し音で
高橋の声が聞こえてきた。


「…葵?」

「どうしたの…?」

心なしか声のトーンが
いつもより低い気がした。

「いまどこ?」

「家だよ。」

「ねぇ…。」

「ん?」


落ち着かなくなって
携帯を意味なく
左手に持ち変えてみる。


「あいたい。」

「……うん。」



閉めきった部屋に
雨の音が聞こえてきた。
一週間ぶりに降る雨は
彼の消え入りそうな声を
かき消してしまいそうだった。



なにがあったの?
どうかしたの?

そんな事聞けなかった。
というより聞くのが怖かった。


彼をこんな風にさせる何かが
彼の心を動かしてしまう何かが
確かにあること

私気付いてたの。




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