題 未 定

教えてよ


窓から入って来た
冷たい風に目を冷ました。シャーペンを握りながら寝てしまっていた。

季節は少しずつ秋に近づき
あんなにも暑かった今年の夏は
日に日にその暑さを
和らげていっている。


けれど半袖のブラウスから出る腕を
撫でる風はまだ気持ちがいい。


『寝ればや人のみえつらむ 夢と知りせば覚めざらましを』

ノートの端に書いてある小野小町の詩をまじまじ見つめた。


切ないんだよねこの詩。


ふと向こうを見ると
黒板を眺める愁斗の横顔が目に入った。

だけどその目はどこか
遠くを見ているようで。
最近の愁斗はずっとこんな感じだ。

一緒にいるのに
彼の心はどこかフワフワして
見つめあっているのに
自分ではない誰かを見ているような
気持ちになる時さえある。

そうあの雨の日から。
あの日彼に
何があったんだろう。



「高橋、愁斗から。」

隣の子から紙を受けとる。

『あおちゃん寝すぎ。期末近いんだから!!今P32 愁斗』



なーんだ。
授業聞いてるか。
……考えすぎかな?

紙から顔をあげると
愁斗と目があった。

にひっと笑う彼を見ると
あたしはいつも
自分の思い過ごしではないかと
思ってしまう。



聞けないよ。どうしたのなんて。




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