その赤薔薇を手折る時
「なんだって?」


ヴァイオリンの弦を人差し指でなぞりながらアスカがきき返した。


「ですから、パーティーの招待でございます坊ちゃん」



「僕は、そんなチンケな会に参加するほど暇じゃない。」


ふて腐れたように言い放つアスカをしり目に、ルインは楽譜をパラパラとめくる。

ふと、あるページでルインの手が止まった。

{さだめの時}


この曲がいい。

舞踏会で演奏するには丁度良い曲だ。

テンポも悪くない。


「坊ちゃん、演奏する曲はこちらにいたしましょう。」


「聞いているのか?」


ビュっとアスカの手が伸び、ルインの手から楽譜を奪い取った。


顔をぐっとルインに近づけ、ハッキリと言い切る。


「僕はパーティーなんて行かな・・」



「では破産いたしますか?」


「なっ!」



いきなりの言葉にアスカの顔がひきつった。

なんの話をしているんだ・・・。




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