ごめんね、ありがとう…先生
「ただいま」
「お帰り。ご飯は?」
「後」




自分の部屋に入った沙依は鈴奈と電話を始めた。


「もしもし。鈴奈?」
「うん。今着いたの?」
「うん」
「で、どうだった?」
「緊張して何も話せなかった」
「だよね。拓哉って基本的にしゃべらないから」




鈴奈は学校以外の場では伊能先生を拓哉と呼ぶ。





「ねぇ、鈴奈。どうして伊能先生は私を送っていくことにしたのかな?」
「うーん。多分ね」
「多分?」
「私の気持ちを拓哉が知ってるからだと思う」
「そっか……」





鈴奈は義樹が好き。

拓哉はそのことを知っているのだ。





「じゃあね」
「うん」








しばらくして電話を切った。
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