私、婚活します!

綺麗の意味



「あっ、咲子さんおはようございます!」


出勤すると、早番だった亜由美がぺこっと頭を下げる。


「昨日は、ありがとうございました」


「いいえ。大丈夫よ」


いつものように、にこっと笑顔を返すと、じーっと見つめられる。


「え……っと」


「あーっ、ごめんなさい!」


大声を上げた亜由美に、人差し指を口にあて、静かにと合図する。


「なんだか咲子さん、いつも綺麗ですけど、今日は格別!何かいいことでもありましたか?」


亜由美は、クリクリの目を嫌らしく細め、ニヤリと笑う。


「べ、別に?」


ふふふと笑う咲子に、亜由美はツンツンと肘で突く。


「今度教えてくださいねっ」


キャッキャッと笑いながら、亜由美も咲子も仕事に入る。






「すみません、昨日いただいた試供品のファンデーション、オークルを変えたいんですけど」




「彼女にプレゼントしたいんだけど、この香水人気ですか?」



今日も、たくさんのお客さんで賑わい、咲子も亜由美も笑顔で接客をする。






変わったのは


咲子の笑顔―――。




「お疲れ様でした」



勤務を終え、クローズを済ませ、在庫と発注を確認した咲子は、ふぅと息を吐いた。



足早にお店を出て、ハンドバッグをぷらんぷらん振りながら歩く。




ドンと人にぶつかり、慌てて謝る。


「っと……」


「ごめんなさい!」


頭を下げて、顔を上げると、ぶつかった人同士が、あっと声を漏らす。



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