昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
さっそく始まるネタ。

風間が笑うたびに、そのふわふわした髪が揺れる。


色抜けたんかな。

風間の髪の毛って、柔らかくて染まりやすそうや。


別に意味なんてないけど。なんとなしに、ずっと引っかかっとった疑問を聞いてみることにした。


「…あんなぁ」

「ん?」

「風間ってなぁ」

「うん」

「ウチのどこを好きになったん?」


─ガタン!!って。

風間の体が跳ねて、その拍子にテーブルも跳ねる。

テーブルの上に乗っとったグラスの中身が、ギリギリこぼれん程度に波立った。


「は…おま、なに──」


風間、顔が真っ赤や。


っていうか、風間の反応に、ウチがビックリした。


…え、だって。風間ってこんなキャラやったけ?

今まで飲み会で、フツーにくだらん下ネタとか言い合いしとったやん。


「なんでいきなり…」

「え?だってめっちゃ疑問やねんもん」

「…べつに……」

「え?」

「〜別にどこがとか限定やなくて!!気がついたら好きんなっとってんあるやろそういうの!!」


テレビの中から、場にそぐわん大爆笑が響く。

風間があんまり必死やから、思わず姿勢正して縮こまる。


「お…怒らんでもええやん…」

「怒ってへんし……、あ〜もう、ほんま…」


はぁぁぁぁ、って死にそうな息吐いて、風間が顔をベッドカバーに沈める。


「……」

「………」

「…DVD観ぃひんの、風間」

「………」

「…………」

「…………」

「風間、DVD──」

「今」


風間の手が伸びてきて、ウチの手首をぎゅって握った。

ウチより、ちょっと熱い。手のひら。


風間の顔が、こっち向く。


「今な…。めっちゃ嬉しいねん」

「………」

「めっちゃ…、だってな」

「……、か…」

「…好きな子と、付き合えることなってんで?」


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