昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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「あーあかん…もう食べられへん…」

「…なんの夢見とるねん、優子」


すぐ近くで聞こえた風間の声に、ハッと目を覚ます。

…えーと。ウチはなにをしてたんやっけ───。

キョロキョロ辺りを見回して、やっと自分の置かれてる状況を思い出した。


ちょっとゆったりした座席。

窓にうつる景色は一瞬で、滝みたいに勢いよく流れてく。


…あ、もしかして、ウチ。


「…う…わ、ごめん…爆睡しとった…」


もしかしてもしかせんくても、旅行先の新幹線の中や。


「ははっ、ええって!やっぱさすがの優子でも深夜労働バイトは疲れるやろ」


風間はウチの頬をうにうにこすって、ははって楽しそうな声で笑う。


「ほっぺた。へんな型ついとるで」

「げっ!?ウソやん!?」


慌てて頬を両手でおおった。たしかに一部分へこんどるわ。

どんだけ爆睡しとってん自分…!!しかもだいぶ思いっきりもたれかかってごめん風間。


独特の、ゴーって風がうなるような連続音。

旅行先に向かう新幹線。続くトンネル。


けっこう寝とったみたいやから…今ここがどこなんかも、全っ然わからへん。



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