純情BABY
キスかと思いきやデコピンされたけど。



って!




「ちょっと!デコピンの分の仕返しがまだだよ!」



すっかりごまかされかけてた!




手を振り上げてデコピンの形を作る私に、渋谷は笑いながら避ける。




『痛そうだからイヤだって言ったろ?それに、あそこでキスはしちゃダメなんだろ?』




「え?」




振り上げてた私の手をパシッと音をたてながら掴む。




そしてそのままギュッと強く握ってきた。





『付き合ったらまずは手を繋いで…だろ?

そこから始めたいって言ってたもんな』




「っ、」




キス、しなかったのは、私の…ため?





手を繋いで。それからキスしたり。
ぎゅって抱き絞めたり、抱き締められたりを繰り返して。

それでも足りないって、好きってキモチが溢れ出てどうしようもなくなったら、その時はーー…




そう言った私のキモチを尊重してくれたの?




『そういう理由だから仕返しはナシ。いいな?』





「ーうんっ!」




『よし、じゃあ教室戻るぞ』

頷いた私を見て、渋谷は手を繋いだまま半歩前を歩き始めた。



ジワリ滲んだ涙を、こっそり拭いた。




「渋谷、ありがとね」




私のキモチ、尊重してくれて。




渋谷はなんにも言わないで前を歩いてた。




近いうち、渋谷とキス、できるといいな。




手を引っ張り歩く渋谷の背中を見ながら心の中でそんな事を思った。













第1話 END



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