キミは聞こえる

三章-5


「―――ねぇ、こっちなんかどうかな」
「……テーマが初夏なのに、リンゴ……?」

 佳乃は持参したパソコンを泉へ向けるといささか自信ありげな表情で一枚の画像を拡大した。
 そこには赤々と熟したリンゴが三つ籠に入って写っていた。

「リンゴがメインじゃないよ。メインはその隣のカーネーション」

 怪訝そうな顔で画面をのぞき込むクラスメイトに、佳乃はぷうと小さく頬を膨らませた。

 ……初夏と言われてカーネーションを連想するやつなどいるのか。
 たしかに五月は母の日があるけれども、だ。その組み合わせはいかんだろう。
 いくら本人は否定しても主役ばりに出しゃばっているじゃないか、リンゴが。リンゴは夏じゃねー。

 ―――と、心の中で思ってみる。

 口では、

「あぁ、なるほど」

 無難な返事をして逃げる。
 面倒は極力避ける―――それが泉である。
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