キミは聞こえる
 それこそ授業が始まればあとは私語厳禁なのだから、はぶかれていると、いじめられていると感じるには時間が短すぎるようにおもえる。

 泉は軽い頭痛を覚えた。ちいさくかぶりをふって痛みを追いはらう。

(……これだからグループなんて、いやなんだよなぁ)

 たぶん、泉にはわかりようもない想像も付かないほどのなにかがグループ内で起こったのだろう。それとも直接的になにか言われたか。
 どちらにせよ、あらためて人付き合いというものが面倒で、億劫で、ろくなことがないものだ、という観念を揺るぎないものとさせた。
 泉の面倒くさがり屋に拍車をかけたのもそのときだっただろうと思う。

 クラスに帰ると、理那はやはり一人にされていた。それも、あまりに露骨なほど、避けられていた。
 すぐそこに理那がいる、という事実から完全に目を背け、半ばいないものとして扱われているような印象を受けた。
 五十貝が理那に話しかけることはなく、それは彼女を囲む周りの女子も同様だった。見向きもしない。
 理那の矜持が許さないのか、彼女は五十貝たち以外の者とは連もうとしなかった。泉はもちろん、他のグループの女子にたいしてもそうだった。

 いや、それは単に泉が気づかなかっただけで、陰では他の女子たちにも声をかけていたのかも知れない。

 しかし、うまくいかなかった。

 なぜなら、五十貝がすでに手を回していた後だったから―――。

 ……考えすぎかも知れない。
 ほんとうに、理那自身がクラスを仕切る五十貝ら以外を見下す癖が直らず、話しかけようとしなかっただけかも知れない。

(……)

 けれど。
 泉の予想も、あながち間違ってはいなかったと、おもうのだ。
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