キミは聞こえる
 設楽に会って、彼の能力に触れて、いま感じている恐怖はいままで聴いてきたどんな"声"よりも彼女の胸を強く揺さぶるものだった。

 五十貝の声を聴いたときとはなにかが違う。

 ちがう。
 ならばなにがちがう。

 聴いたから、恐怖を感じるのではない。根本的なところで恐怖の種類が違う。

 怖いのは怖いでも、これは、聴かれたことによる恐怖。

 心をのぞかれたことが、こんなにも人を動揺させてしまうものだなんて―――。

 突然、目の前に強い明かりが飛び込んだ。
 ブレーキをかけられた車輪が急停止する。とっさに避けたはいいものの、あまりにいきなりのことだったので体が着いていかず、ずでんと草原に転んでしまった。

 間を置かず、頭上から怒号が降ってきた。

「―――っぶねぇな! 気を付けろ―――って、おまえ」
「す、すみません…………あ、あれ……桐野くんの、おにい、さん?」
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