キミは聞こえる
「嫌な話とか意味なくなるとか、そんなこと全っ然おもってないんだからな!」
「そ、それならよかったけど、なにもそこまで声上げなくても……」

 ちらりと背後を振り返った代谷の視線の先を追うと、そこには庭いじりに戻っていた友香姉の母がいた。水が出るホースを掴んだまま、驚いた様子でこちらを見ている。

 ―――――んなッ……!?

「落ち着いて、ゲームに戻ろう。画面、固まったままだからいい加減動かして」
「あっ、ああ、わかった」

 赤面したままどかっとその場に腰を下ろし、コントローラーを掴み上げる。
「それ逆」と即座に突っ込まれ「わっわざとだ!」と無理矢理な言い訳をして逃げてみるものの、あきらかに動揺しているだけとしか思えないだろう。
 それでますます頭が熱くなってくる。

(俺、めっちゃかっこ悪ぃ……)
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