キミは聞こえる
「代谷さんてなんか危なっかしいんだよね。ぼーっとしてる感じするから」

 ……ま、まぁときどきはそのまま言葉をぶつけることもあるけれど、このくいらいは愛嬌として見逃すことにする。
 
「―――じゃあ帰りはここで待ってるから」

 本当に高校の目の前まで康士は着いてきてくれた。横断歩道を渡ればすぐそこは鈴森南高校だ。

「桐野君は通り道だって言ってたけど、ほんと……?」
「ほんとほんと。だけどここって人通り多いし高校生もたくさん通るから中学生は一本裏の道通っていくんだ。距離はだいたい一緒。じゃあ俺ももう行くわ。また夕方にね」
「ありがとう」
「――――ちょっとちょっとー泉。彼氏いないとか言ってー、実はあんなに可愛い殿方がお側にいたんではなくて?」
「あれって桐野の弟でしょ? 二つ下だよね。まさか泉って年下キラーだったとか?」

 康士が手を振って去っていくと、入れ替わるように背後からとんでもない言葉が聞こえてきた。

 ふりかえると、興味津々といった表情の千紗響子と目が合った。
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