キミは聞こえる
「そりゃあ俺も俺なりになんとかしてやろうと思った。中学んとき、栗原が原因じゃねぇって担任に進言しに行こうとした。でも、栗原がいいって。そんなんじゃいつまで経っても悪者扱いされたままだぞって怒鳴ったら、泣かれて、言いに行くどころじゃなくなった」
「……はっ!? ちょ、おま、栗原のこと泣かせたのか」
「林間学校終わって、すぐにな」
「うわぁ……いくら心配してるからってそれはさすがに」
「おまえはそういう性格だからな。おまえは怒鳴るより一緒に泣いてやる同情タイプだろ?」

 そうでもないと思うのだけれど。
 ……とは思いながらも、余計なことを挟んでいると話が進まないのでここは呑み込むことにする。

 そろそろ分かれ道にさしかかってきた。

「さぁ……」と曖昧に相づちを打つと、「そうだ」と小野寺はきっぱり言った。

「すくなくとも、俺よりは感情にまかせて相手を怒鳴りつけたりはしないと思う。栗原を泣かせて、これでわかったかと思ったけど、それでも栗原は教師を頼りはしなかった。ただ、ごめん、って言っただけだった。それでますますあいつのことが嫌いになった」
「またか」
「まただ。それからも何度も何度も嫌いになった。積もり積もって、何度か隣にいるやつを誰でもいいから殴りたくなった」

 なんて危ないヤツだ。
 もしかするとその誰でもいいからのやつに自分も入っていたのではないかと思うと、ちょっとだけ寒気がした。

「あいつを見るたんびにすっげぇ憤りを感じたね」

ちいさく頭を振る。 
 
「まったく……。俺には小野寺がよくわからん」
「俺もだ。でもよ、誰かを好きになるのって、唐突で、わかんねぇことが多いもんじゃねぇの?」
「そんなもんか?」
「人それぞれって言われたらそれまでだけどよ。俺は、そんな気がする。おまえはどうよ」

「へっ?」

 どきりとした。まだ諦めてなかったのか。
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