キミは聞こえる
 常に体育館でサッカー部とどっこいどっこいの練習量を誇っていたバスケ部員が桐野の憧れの人物が誰であるかを察するほどよくよく観察していたはずはない。

 そんな余裕があるその程度のやつだったならば、設楽が三年を無視して後輩からの羨望の眼差しを一身に受けていられるわけがないのである。

(どこから知った?)

 ……いや、誰にも話していないのだから、桐野本人以外からなど知りようがない。


 代谷が言った同類とは、設楽から感じる奇妙なうすら寒さや、終始うしろから見つめられているような得体の知れぬ怖さに関係することなのだろうか。


 力なくかぶりを振って、息を吐く。


(わっかんねぇ……)

 ドライヤーを止めて、ぐしゃぐしゃの髪を手櫛でさっとまとめる。

 母親譲りのクセの付いた髪のため、あまり意味はない。


 不意に部屋の中が暗くなり、顔を上げる。

 煌々と輝いていた月がいつしか雲に隠れて姿を消していた。



(代谷泉)



 何者なんだ、あいつは………。


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