キミは聞こえる

四章-10

 試合当日。

 一日目、鈴森南高校は第四試合を予定されている。

 どこまでも澄み渡る蒼天の下、前の試合までが滞りなく行われた。

 次の試合の予定時刻まではあとわずか。

 選手でないにも関わらず隣に腰掛ける佳乃は、前の試合が終了しスタンドに上がって席を確保してからというもの落ち着きのないことと言ったらない。

 ずっとそわそわもぞもぞしている。

 目障りこの上なく、気が散るのでいっそトイレに行きたいのかと突っ込み大人しくなってもらおうかとも考えたのだが、落ち着かない理由はわからないでもないので敢えてなにも言わずそのままにさせている―――させてやっている。


 佳乃はとうとう小野寺と付き合い始めたらしい。


 土曜日の夜、佳乃から電話が来た。

 受話ボタンを押すと、次の瞬間、何事か起きたのかと心配になるほどの大声で、

『代谷さん、私、やったよ! やったの!』

 と出し抜けに叫ばれた。

 宝くじでも当たったのか、いやまさか、サマージャンボにはまだ早すぎるのではないかと返すと『そうじゃないよッ』と怒鳴りつける勢いで否定された。

 泉が小野寺と別れた後のことである―――当日の仔細を聞いたとき、泉は心からよかったと思った。

 そして、やはりあの小野寺という男は本物だったと確信した。泉の目に狂いはなかったのだ。


『大事にしなよ』

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